発信者情報開示請求が届いた時の流れを解説

こんにちは。KYOです。

今回は、発信者情報開示請求のお話です。

発信者情報開示請求とは、投稿者の個人情報をプロバイダ(通信会社)に求めるもので、プロバイダがこれに応じた場合、あなたの個人情報が請求者に渡ることになります。

通常、プロバイダが当人の許可なしで個人情報を請求者に渡すことはないため、多くのケースでは発信者情報開示請求訴訟に発展します。

実は、私の元にも発信者情報開示請求が複数回届いたことがあり、その内1件は発信者情報開示請求訴訟に発展しました。

ただ、この訴訟はプロバイダ側の勝訴に終わったため、私の個人情報が開示されることはありませんでした。

今回は、私の実体験を踏まえて、発信者情報開示請求が届いた場合、どうするべきかを解説いたします。

[補足]
私は弁護士ではなく一般人であるため、この記事は私個人のやり方を推奨するものではありません。

あくまでも参考例としてお読み下さい。

ある日突然、発信者情報開示請求が届いた

ある日のこと、メールを開くと以下の文書がプロバイダ(エックスサーバー)から届いていました。

上記の通り、肖像権の侵害を理由として、相手方が損害賠償請求を行うべく私の個人情報を開示するようエックスサーバーに請求してきたのです。

通常、発信者情報として開示することを請求されるのは以下の4つです。

(1)発信者の名前または名称

(2)発信者の住所

(3)発信者の電子メールアドレス

(4)発信者の電話番号

初めてこの通知を受け取った方は激しく動揺してしまい、何をすべきなのか分からなくパニックなってしまうかもしれません。

私も最初の1件はそうでした。

ただ、発信者開示請求を複数回受けていると、それほど動揺せずに対応できるようになりました(笑)

発信者開示請求が届いた時に最初にすべきことは「深呼吸をして落ち着くこと」です。

動揺したまま何も手に付かず、時間だけが経過していくという事態が最も問題です。

発信者開示請求が届いた時、私は何をしたのかを順を追って説明いたします。

発信者開示請求が届いた時の流れ(1)回答までの期限を確認する

発信者開示請求が届いたら、まず回答の期限を確認します。

私の場合、この通知から7日以内に回答しなければなりませんでした。

7日以内と聞くと意外と猶予があるよう見えますが、実際はそうではありません。

なぜなら、7日以内に説得力のある回答を用意しなければならないからです。

プロバイダが自分の個人情報を相手に開示してもいいというのであれば、「開示に同意する」に〇を付ければいいだけなのでパニックになる必要はないはずです。

少なからず動揺しているということは、「開示に同意しない」からであって、自分の個人情報を相手に渡したくないからでしょう。

そのためには、開示に同意しない説得力のある回答を用意しなければなりません。

「説得力のある」とは「法的根拠に基づいた」という意味であるため、単に「開示を拒否します」や「私の投稿は違法ではありません」といった回答では不十分です。

説得力のある回答を用意するためには入念な下準備が必要となり、そうすると、7日以内という期限は1日たりとも無駄にすることが出来ないというわけです。

(2)複数の弁護士に相談する

回答の期限を確認したら、今度は弁護士に相談することを検討します。

自分で回答書を作ることもできますが、やはり、「餅屋は餅屋」という諺の通り、法律のプロである弁護士に意見を仰いだ方が賢明です。

ただでさえ今は自分の個人情報が開示される否かの瀬戸際なので、弁護士にアドバイスをもらうのが最も適切でしょう。

ただ、私は複数の弁護士に相談をしました。

これはセカンドオピニオンも兼ねていましたが、実際に弁護を依頼することになった場合、どの弁護士が最も能力があるのかを見極めたかったからです。

弁護士に相談するというとハードルが高いように思えますが、実際はそんなことはありませんでした。

というのも、多くの弁護士事務所は初回相談無料を謳っているため、1回目の相談だけなら無料で受けることが出来るからです。

私は3人の弁護士に相談しましたが、2人は30分無料で、1人は1時間5,000円でした。

[補足]
3人目の弁護士は初回相談でも無料にはなりませんでしたが、本来の相談料は30分5,000円でした。

そのため、初回の相談者は半額で相談を受けられるという仕様でした。

初回無料の弁護士事務所が大半ですが、だからといって何の準備もせず相談を受けることはお勧めしません。

時間と弁護士の能力を効率的に活用するために、私は事前に以下の書類を持参して行きました。

(1)プロバイダから届いたメールをプリントアウトしたもの

(2)自分が投稿した内容をプリントアウトしたもの

(3)自分で作成した回答書

(4)自分の投稿が違法行為ではないことをを証明する証拠

最低限でも(1)と(2)は持参すべきですが、余裕があれば(3)と(4)も用意しておくべきです。

特に自分が回答書を作れるのであれば、それを持参することを強くお勧めします。

なぜなら、自作の回答書を持参しておけば、プロの弁護士から直接添削を受けることが出来るので、より精度の高い回答書を作れるからです。

発信者情報開示請求の回答期限は7日しかないため、別日に弁護士から回答書の書き方についてアドバイスを受ける猶予はありません。

そのため、可能であれば最初から回答書を用意して、初回の相談中に弁護士から添削・指導を受けた方が賢明です。

幸い、私は文章を書くことが苦ではないため、予め回答書を持参して弁護士から内容を精査して頂き、「よく書けてますね」とお褒めの言葉を頂きました(笑)

(3)弁護士に依頼するか否かを検討する

弁護士に相談に行った後は、発信者情報開示請求の対応を弁護士に依頼するか否かを検討します。

ただ、弁護士に依頼すると言っても「どの範囲まで依頼するのか?」という問題があります。

この範囲については、下記の通り、AとBのパターンに分かれると思われます。

(A)全ての対応を依頼する

(B)回答書の作成のみを依頼する

(A)の場合が最も楽で、弁護士が全ての窓口になるため、基本的に依頼者(あなた)は何もする必要はありません。

プロバイダとのやり取りも弁護士が担当しますし、もし相手方と裁判になった場合でも、あなたは裁判所に出廷する必要が無くなります。

ただ、この場合の欠点は弁護士の依頼料が高額になることです。

私が相談した弁護士の場合、最低でも30万円はかかる計算でした。

お金をかけられない場合として(B)を検討しますが、回答書の作成のみの依頼であれば、ケースバイケースではありますが、おおよそ10万円ほどで済みます。

法律のプロが作成した回答書なので、説得力のある内容に仕上がっていることが最大のメリットです。

しかし、あなたが投稿した内容が誰の目から見ても違法である場合、プロが作成した回答書を以てしても、裁判所は発信者情報の開示を命令する可能性が高くなります。

そのため、弁護士に回答書の作成を依頼する場合は、自分が投稿した内容の違法性を客観的に判断する必要があります。

例えば、「〇〇は殺人で逮捕されたことがある(虚偽)」や「盗撮した写真をネットに公開した」という行為は誰の目から見ても違法であるため、このようなケースで弁護士に回答書の作成を依頼しても、裁判所の判断により、まず間違いなく発信者の情報は開示されます。

裁判に絶対はありませんが、弁護士の経験則から「これは開示される可能性が高い」と判断されたものは敢えて回答書の作成を依頼せず、事態を静観するのも手です。

プロバイダとしては安易に発信者の情報を開示すると、それが原因で発信者から訴えられる可能性があるため、どんな内容でも回答書を送っておけば、ひとまずは非開示の判断を下すはずです。

その後、この非開示を不服として相手方が発信者情報開示請求訴訟を起こしてきた段階で改めて弁護士に事件を依頼するのもいいかもしれません。

発信者の情報が開示される可能性が高い事件であれば、最初の段階は敢えて弁護士に依頼せず、訴訟になって初めて弁護士に依頼すれば回答書の作成代を浮かせることが出来ます。

無論、発信者情報開示請求を受けた時のベストな対応は人によって異なるため、これらはあくまでも参考程度に留めておいて下さい。

ちなみに、私はこの回答書を自分で書いたので、興味のある方は以下の記事も併せてご覧ください。

非開示または開示後の流れ

プロバイダが非開示の判断を下すのか、それも開示の判断を下すのかで今後の流れが大きく変わってきます。

非開示の場合

プロバイダの判断で発信者の情報が非開示になった場合、相手方がこれを不服として訴訟に踏み切る可能性があります。

その場合、相手方はプロバイダを訴えることになり、発信者(あなた)は直接裁判に関わることはありません。

ただ、プロバイダは発信者の意向に沿って主張を展開するため、必要に応じてプロバイダから意見聴取が行われます。

日本では三審制が採用されていますが、最高裁まで争うことは非常に稀なので実際のところは二審制と言えるかもしれません。

地裁・高裁・(最高裁)においてプロバイダが勝訴すれば、発信者の個人情報が相手方に開示されることはありません。

しかし、一度でもプロバイダが敗訴してしまうと、裁判所の判断を理由に発信者の情報を相手方に開示します。

というのも、プロバイダ側が判決を不服として控訴することはほぼ無いからです。

プロバイダからすれば、発信者情報開示請求訴訟は「発信者vs相手方」という二者間の争いに巻き込まれただけで、いわば代理戦争のようなものだからです。

そのため、プロバイダ側は敗訴しても積極的に控訴しようとはしないのが現状です。

開示の場合

発信者の情報が開示された場合、相手方が弁護士を付けれていれば弁護士経由で連絡が来ます。

大抵の場合はあなた宛てのメールアドレスに通知が届きますが、いきなり損害賠償請求の訴訟を予告されることはないはずです。

通常ですと、最初の接触では示談交渉を持ち掛けてくるはずです。

ただ、この時の示談金は吹っ掛けられている場合が多く、相場からは大きくかけ離れた金額が提示されると見て間違いありません。

なぜなら、弁護士は「正義の味方」ではなく「依頼者(相手方)の味方」だからです。

そのため、相場を踏まえた金額を提示してくることはまずあり得ません。

しかし、法律の知識を持たない素人が弁護士を相手に示談交渉することは不可能と言えます。

適切に反論できないばかりか、さらに不利な条件で示談交渉を進められる可能性があるため、弁護士から連絡が来たら、こちらも弁護士を付けることを強くお勧めします。

弁護士同士であれば相場も分かっていることから、早めに事態を収拾してくれる可能性が高いです。

さらに、もし裁判に発展しても適切に反論してくれるので、たとえこちらが敗訴しても、損害賠償金の減額に成功してくれる公算が高まります。

勿論、自分で裁判に臨む本人訴訟も可能ですが、裁判官が納得できる程の主張・反論をする必要があるため、これが出来ないと相手方の請求通りの賠償金が認められてしまう危険があります。

こうしたリスクがあることから、本人訴訟はお勧めしませんし、裁判に発展してしまったら、余程の事情がない限りはこちらも弁護士を付けましょう。

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